真昼の夢の




 ――そこは、館から少し離れた所に建てられた温室。

 体育館並の広さだと、彼女は形容した。
 が、実際はそれよりも少しばかり大きい。木々や花々などが多少小さくみせているのだ。天井も高く、鉄鋼とガラスが光りを遮らないように作られていて、室内はとても明るい。温度も湿度も一定に保たれ、寒い日などでも快適に過ごすことが出来る作りだ。
 そこにはぽっかりと開けた一角があり、床には綺麗にタイルが敷かれ、美しいモザイク画が広がっていた。白と濃淡のある緑と青のタイルは周りの緑とよく溶け込んで、もうすっかり馴染みのものとなっている。
 そこに、ひとつだけ、他の温室には見られないような物が置かれていた。唐草模様の刺繍が入ったモスグリーンの小さなそのソファは、小さな丸テーブルと一緒に、そこを訪れる人をただ静かに待っているようである。
 様々な観葉植物と花々が、外界からの視線を遮っている。物音ひとつしない。そこだけ時間が止まっているような、そんな感じさえさせるところに、その空間があった。
 細いアーチを抜けてその場所に来れば、まず目に入るのは、そのソファとテーブルのワンセットである。





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