王子様とお姫様



 昔々、とある国に物憂げな王子様がいました。お后様は彼に結婚を進めますが、王子は大変な人間嫌いであり、その冴えた頭脳や性格故に、なかなか結婚までには至りません。そこで心配したお后様は、魔法の鏡に相談しました。
「鏡よ、鏡、この世でシャルルの心を射止められる方はいるのかしら?」
 お后様の持つ魔法の鏡は素晴らしく優秀で、魔法の鏡に尋ねると、どんな質問でも必ず答えてくれます。魔法の鏡は、うやうやしく言いました。
 ――はい、いらっしゃいます――
「まぁ、その方は誰?」
 ――“白雪姫”でいらっしゃいますよ、お后様――
 そう言って鏡に映し出されたのは、森で小人達と戯れる“白雪姫”の姿でした。一番小さな女の子と、その手前に座る、一見すると男の子と勘違いしてしまいそうな美貌の女の子。
 ――瞬間、お后様は臣下に、“白雪姫”に悪戯を仕掛けてくるように命じられました。

 それからというものの、“白雪姫”は猟師に悪戯を仕掛けられるようになりました。最初、猟師は猟師らしく猟銃で脅そうとしましたが、彼は猟師とはいえ銃の腕はイマイチでしたので、あっという間に逃げられてしまいました。けれど、猟師は格闘技と罠を仕掛けることが得意でしたので、毎日のように罠を仕掛けては、“白雪姫”と、一緒にいる小人達に悪戯をしました。
 そんなある日、悪戯される理由を聞いたマリナという“小人”が、お城までやって来て王子に訴えました。
「ちょっと、あんたのママン、どうにかして止めてくれない!? 迷惑してるのよ」
「あの人は私が何か言っても聴くような人じゃない。諦めるんだな」
「そんなこと、やってみなきゃ分からないじゃない! やる前から結論を出して何も行動しなきゃ、何も変わらないわ。少しでも変えられるよう、何度だってチャレンジすることが大切なのよ」
 「ふんっ」とだけ言い残して、彼女は去って行きました。
 王子様は肘掛に腕を乗せ、深い考え事をする、発作状態に入ってしまいましたが、その理由は誰にも分かりませんでした。

 ――その後、王子様が“白雪姫”と小人達の所へ訪ねて行きましたが折り合いがつかず、“白雪姫”と喧嘩をして帰って来ました。その翌日には、マリナとカズヤと名乗る小人がどうにか仲直りしようとやって来ましたが、気難しい王子様はずっと押し黙ったまま。けれど、1日中黙っていることなんて、いくら王子様でも出来っこありません。ふたりが森に帰る頃には、3人はそれまでよりもうんと仲良くなっていました。
 マリナはいつまでも振り返っては手を振り続け、危うく川に落ちそうになるところでカズヤに助けられ、叱られてしまったほどでした。




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