「おはようございます、マリナさん。シャルル様にご用事でしたら、ジル様といつものお部屋にいらっしゃいますよ」
「ありがとう、マドレーヌ!」
それは、いつもと同じ朝の光景。
日本語でしか意思を表現しないマリナにとって、滑らかに日本語を使いこなすマドレーヌは、信頼と安心の出来る友人のようなものだ。ジルと一緒にいることの多い彼女は、マリナが今日はシャルルに用事があることも知っていた。いつも楽しそうなマリナの笑顔を見ながら、マドレーヌは3人分のお茶の用意をしようと考え、微笑みを返す。
「お菓子は何がいいですか?」
「クッキーが昨日届いたって言ってたわよね。クッキーなら3人でもいっぱい食べられるわ。クッキーにしましょ」
誰がいっぱい食べられるのか、何も聞かなくてもわかっていたマドレーヌは、クスクスと笑って「クッキーですね」と確認してマリナと別れた。
そこまで何キロメートル?
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