とてもきちょうで、めったにてにはいりません



 珍しい白金色の、長く綺麗な髪。繊細でどこか女性的なカーブを描く頬。長い睫毛の奥には冬の湖底を思わせる青灰の瞳。その瞳と薔薇色の唇がゆっくりと動くのを、あたしは食い入るように見ていた。
 神経質そうな長い指先が鼻先にまで迫り、握られていた人差し指が直前で視界からそれて、直後、おでこに衝撃を受けた。
「――っ!?」
「そんなに見るな。食われそうで恐い」
 ひどい。言うに事欠いて、「食われそう」とは何よ、失礼しちゃうわねっ。
 確か前にも誰かに同じようなことを言われた気がするけれど。まったく、皆して酷いわね、人を何だと思っているのかしら!?
「誰も取って食ったりしやしないわよっ」
 ヒリヒリするおでこを撫でながらそう返すと、シャルルはわずかに眼を伏せて、
「君ならあり得ないことじゃない」
 と言って微笑した。あるかなしかのその微笑みは、冬に咲く小さな花のようで、ほんのりとあたたかい気持ちにさせられる。
 ああ、シャルルって本当に美人。
 そりゃあ、言われた言葉は相も変わらず酷い言葉ではあったけれど……。
 それでもシャルルがそんな風に笑うのはとっても珍しいことで、あたしは自分の怒りなどどこかよそにやって、思わずウットリと見とれてしまった。いつもこんな風に笑っていたらいいのに。そうしたら、誤解を受けることも少しは減ると思うのにな。

 ――でも。

「……シャルル、あたし、あんたの笑った顔が好きだわ」

 でも、滅多に見られないからこそ、欲しいと思う。貴重だと、大切だと思う。
 きっと彼自身、気付いてすらいない。


 あなたがどんなに素敵に笑うのかを……。





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